お知らせ

集団的自衛権行使容認及び安保法制改正法案に反対する会長声明

2015.07.02

1 政府は、昨年7月1日、従来の政府解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認する閣議決定をした。
集団的自衛権の行使は、わが国に対する直接の武力攻撃がなくても、他国のために武力を行使することを認めるものである。
これを解釈によって容認することは、戦争を放棄し武力による国際紛争の解決を禁じている憲法第9条に違反し、立憲主義の基本理念に反するとして、当会も、会長声明により反対の意思を表明してきたところである。

2 それにもかかわらず、政府は、集団的自衛権の行使を目指し、自衛隊法・武力事態対処法・周辺事態安全確保法・船舶検査活動法・国際平和協力法等、10件の防衛関係法律の改正を内容とする平和安全法制整備法案、及び恒久的に自衛隊を海外に派遣する新規立法の国際平和支援法案を決定し、本年5月15日、国会に提出した(以下、これら法案を総称して「本法案」という。)。

3 本法案は、
(1) 第1に、自衛隊法・武力事態対処法等の改正により、「存立危機事態」と認められる場合に、わが国の自衛隊が、米軍その他の外国軍隊とともに、いつでも、世界中のどこででも、武力を行使することを可能としている。
このような「存立危機事態」という不明確な概念により、他国とともに武力を行使することは、まさに「武力の行使による国際紛争の解決」を禁じている憲法第9条に違反する。
(2) 第2に、我が国の周辺事態に対応する米軍の後方地域支援等に限定していた周辺事態安全確保法を、重要影響事態安全確保法に改正し、「重要影響事態」に該当すれば自衛隊の後方支援を可能としている。
しかし、この「重要影響事態」概念も明確とはいえず、現に戦闘行為が行われている現場以外であれば、地域の限定なく、米軍以外の外国軍隊に対しても後方支援ができることになる。
そして、かかる後方支援は、他国の武力行使との一体化と見られるものである。
さらに、自衛隊が、「存立危機事態」として外国軍隊とともに集団的自衛権を行使すると同時に、外国軍隊に対し後方支援を行う事態も想定される。  
この後方支援活動も、他国又は自国の武力行使との一体化と見られるものであって、海外における武力行使につながるものとして憲法第9条に違反する。
(3)  第3に、国際平和支援法を新設することにより、「国際平和共同対処事態」に該当すれば、これまでのように個別立法を作らずとも自衛隊が協力支援活動等を行うことができることとされている。
上記共同対処事態には、国連が統括しない有志連合などによる「国際連携平和安全活動」も含まれており、その対象は広範である。
また、活動の内容としても、国際平和協力法の改正によって、これまで認めていなかった「安全確保業務」や「駆け付け警護」を行うことを目指している上、これらいずれの場合にも、自衛隊に任務遂行のための武器使用を認めている。
この武器使用が武力の行使にあたることは明白である。
さらに、国際平和協力の名のもとで、国際紛争への介入に際して、自衛隊が武器使用による安全確保、すなわち治安維持活動にまで従事することは、他国の武力行使と一体化することとなり、自衛隊による海外での武力行使に発展する事態を招きかねない。
これもまた、海外における武力行使につながるものであり、憲法第9条に違反する。

4 以上のとおり、本法案は、憲法第9条に違反するだけではなく、徹底した恒久平和主義を定め、平和的生存権を保障した憲法前文の趣旨にも反するものである。
そればかりか、憲法に拘束されるはずの政府が、主権者である国民に十分な説明がなく、国民の間に存在する反対の声を無視し、閣議決定という何ら制約のない手続によって、恣意的に憲法の許容の範囲を超える解釈をし、日本国憲法の恒久平和主義に抵触するような政策を進めていくことは、憲法に基づいて統治を行うべき立憲主義に反するものである。

5 よって、当会は、平和国家・立憲主義国家としての日本の国の在り方を根底から覆すものとして、本法案による安全保障法制の改定に断固反対するとともに、憲法に反する本法案が成立することのないよう、強く訴えるものである。

                                                 2015年(平成27年)7月2日
                                                  鹿児島県弁護士会
                                                    会 長  大 脇 通 孝

一覧へ戻る

ページのトップへ戻る
新型コロナウイルスの影響で借入金返済にお困りの方へ
無料法律相談カレンダーのご案内
法律相談会場のご案内
法律相談窓口
司法過疎地域巡回無料法律相談
ひまわりほっとダイヤル
ひまわりお悩み110番
弁護士無料派遣
災害特設ページ
鹿児島県弁護士会へのお問合せ
鹿児島県弁護士会会員ページへログイン
鹿児島県弁護士会CM