決議・声明

高齢者の消費者被害の予防と救済のためのネットワークづくりに関する意見書

2014.03.26

第1 意見の趣旨

1 鹿児島県内の各市町村においては、重点的な施策として、高齢者の消費者被害を予防し救済するために、既に存在する地域包括ケア実施のためのネットワーク等を利用し、行政における消費生活部門と高齢者福祉部門とが連携して、警察を含めた行政と、高齢者の生活に密着して活動する民間関係者が連携・協働する実効的な高齢者の見守りネットワークづくりに取り組むことを求める。

2 鹿児島県においては、県内の各市町村が実効的なネットワークづくりを行うために、それに必要な情報や資料を提供し、また、ネットワークづくりのためのガイドラインを提供するなど、各市町村の施策に対する協力・支援等の取組を行うことを求める。

第2 意見の理由

1 高齢化の進行
 鹿児島県における65歳以上の人口は、2010年には人口の26.5%を占めこれは全国平均を上回る高齢化が進行している状況にある。そして、高齢者の単独世帯や夫婦のみの世帯数及び構成比も増加傾向にある。高齢者のうち、認知症及び認知能力が低下している高齢者も少なからず存在している。

2 高齢者の消費者トラブル
 高齢化が進行する中、高齢者の消費者トラブルも多発しており、鹿児島県消費生活センターにおける65歳以上の人からの消費生活相談は、直近の5年間は常に年2000件前後を推移しており、相談全体の3分の1を超えている。トラブルの種類としては、健康食品の送りつけ、ファンド型投資商品の販売、架空請求、住宅リフォームなどを巡るものが上位を占めており、訪問や電話勧誘によるものが多い。そして、高齢者の消費者被害には、100万円以上の被害額の比率が大きく、詐欺的な利殖商法や、いわゆる二次的被害も多いといわれている。また、視覚や聴覚など身体機能の衰えによる事故など、商品等により危害や危険に遭うことも少なくない。

3 見守りの仕組みづくりの重要性
 高齢者の消費者トラブルを防止し、高齢被害者を救済するためには、単に相談体制の拡充や取締りを強化するだけでは十分ではない。
 市町村は、介護保険制度で取り組まれている地域包括ケア実施のために構築されているネットワークや自治会活動などで高齢者の身近で活動している人たちと、継続的なつながりを持った形で、悪質商法やその被害状況などに関する注意喚起・情報提供を行うこと、見守り活動に向けた研修等を行い「見守り者」としての協力を得て高齢者に対する注意喚起を分かりやすい形で日常的に行うこと、そのような活動を通じて高齢者の身近にいる人たちが、被害を早期に発見して、これを地域包括支援センター、消費生活センターや警察署に相談・通報し、実効的な解決策を求めて相談したり、関係機関が相互に連携し的確に対処できる仕組みづくりをして、このネットワークを実効的に機能させること等が不可欠である。
 具体的な取組方法としては、注意喚起のための情報提供では、市町村や消費生活相談センターによる関係者への継続的なメールマガジンの提供、見守り活動のための研修等では、「見守り者向けハンドブック」「見守りチェックシート」の提供や、その説明を兼ねた見守り者向けの「出前講座」などがある。また、高齢者への注意喚起の方法としては、高齢者向けの「出前講座」だけではなく、「声かけ活動」等の普及も有効である。相談・通報を行いやすくする取組としては、「対応マニュアル」(通報・相談の流れを簡略に説明したもの)、「通報・連絡シート」(記入事項を使いやすい形に定型化したもの)などの配布、さらには「見守り者専用相談窓口」の設置などがある。相互の連携を促進する方法としては、相談員等と「見守り者」による「意見交換会」などの開催も有効であろう。

4 地方の役割について
 高齢者の消費者被害の予防・救済のためのネットワークは、高齢者に身近な地域ごとに形成されることが必要であり、また、地域の実情によってもあり方が異なる。このようなサービスは、市町村及びその地域コミュニティーが主体となって実施していくべき性格のものである(消費者教育推進法第13条、高齢者虐待の防止、高齢者の養護者に対する支援等に関する法律第27条各参照)。
 もっとも、このような取組は、個々の市町村がノウハウもない中で一から作り上げていくには非常に困難が伴うし、また、非効率でもあるため、国とともに鹿児島県がネットワークによる見守り活動の進め方のノウハウを提供するなどの支援をすることが必要である。

5 実効性のあるネットワークを
 高齢者見守りネットワークは、地域包括ケア実施のための地域包括支援センターを中心としたネットワークを利用して、地域包括支援センター及び社会福祉協議会の他に、ケアマネージャー・ホームヘルパーや訪問看護などを行う介護事業者、民生委員、自治会関係者、地域ボランティアの積極的な参加によって、実効性のあるものにすることができる。
 また、ネットワークづくりには、行政における消費生活部門(担当部局と消費生活センター)と高齢者福祉部門(担当部局と地域包括支援センター等)の連携が極めて重要な意味を持つため、様々な工夫が必要である。地域包括支援センターや社会福祉協議会などと消費生活センターの協働関係を日常的に確保していくことが、ネットワークの実効性を確保することにおいて重要である。
 当県は、鹿児島県消費者基本計画(平成23年度~平成27年度)において市町村、地域包括支援センター、自治会及び民生委員等による高齢者の見守り体制と県消費生活センター、県社会福祉課、介護福祉課等の各部署、県社会福祉協議会及び県警察本部等によって構成される「消費生活における高齢者の見守り体制の連携」をすることになっており、その活用が期待される。
 なお、組織の代表又は担当者の1、2回程度の会議だけでは、被害の予防・救済のネットワークとは言えない。本意見書において指摘した具体的な方策についても、あくまでもネットワークの実効性を確保するための手段の一例であり、形式的に実施すれば足りるというものではないし、その地域の実情に即した方策もありうる。何よりも重要なことは、個々の高齢者に接している人が、高齢者の尊厳を支え、プライバシーを確保しつつ、消費者相談の担当者が円滑に連絡し合える関係を確保することである。

6 おわりに
 当会も、高齢者の権利を守るためには各機関の連携が重要であるとの認識のもとで、高齢者の消費者被害の予防と救済のための見守りネットワークづくりへの参加・協力、見守り活動のための研修への講師派遣、高齢者向けの相談体制の整備等、ネットワークづくり及びその活動に可能な限りの支援・協力を行う決意である。

以上

                   2014年(平成26年)3月26日

                          鹿児島県弁護士会
                              会 長  柿 内 弘一郎

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