決議・声明

商品先物取引における不招請勧誘禁止緩和に抗議する会長声明

2015.03.22

1.経済産業省および農林水産省は,2015(平成27)年1月23日,商品先物取引法施行規則(以下,「規則」という。)の一部を改正する省令(以下,「本省令」という。)を定め,商品先物取引について不招請勧誘の禁止を緩和することを公表した。

当会は,2014(平成26)年4月5日付で公表及び意見募集がなされた規則に対し,同月22日付会長声明において,これに反対する意見を表明してきた。

本省令は上記改正案を若干修正し,同規則第102条の2を改正して,ハイリスク取引の経験者に対する勧誘以外に,顧客が65歳未満で一定の年収又は資産を有する者等について,顧客の理解度を確認するなどの要件を充足した場合を不招請勧誘禁止の適用除外規定に盛り込むものである。

2.しかし,本省令の定める上記要件を満たすかについての顧客の適合性の確認は,電話・訪問の勧誘行為の一環として実施されるものであり,事実上,不招請勧誘を全面的に解禁するに等しいものである。

そもそも商品先物取引法214条9号は,商品先物取引法施行令30条で定められたハイリスクな商品取引契約に対し,そのハイリスク性ゆえに,定型的に不招請勧誘を禁止するものである。ところが,本省令は不招請勧誘を禁止するどころか,不招請勧誘禁止規制をそれよりも緩やかな年齢・所得資産要件等の確認義務付けという勧誘規制で置き換えるものである。すなわち,本省令は法律の委任の範囲を超える違法なものであり,省令によって法律の規定を骨抜きにするものと言わざるを得ない。さらに,本省令は透明かつ公正な市場を育成し,委託者保護を図るべき監督官庁の立場とも相容れない。

3.また,委託者に年収や資産の確認の方法として申告書面を差し入れさせ,書面による問題に回答させて理解度確認を行う等の手法は,いずれも,現在に至るまで多くの商品先物業者が事実上同様の方法を採っているところであるが,業者が委託者を誘導して事実と異なる申告をさせたり,正答を教授するなどして形式的に書面を整えさせ,その結果委託者に被害が生じていることは過去の多くの裁判例上も明らかである。

かかる実情に照らせば,これらの手法が委託者保護の機能を果たすとは到底評価しえない。

4.そもそも商品先物取引における不招請勧誘禁止規定については,長年,同取引による深刻な消費者被害が発生し,度重なる行為規制強化の下でも沈静化しなかったため,与野党一致で2009(平成21)年7月の商品先物取引法の改正の際,導入されたとの経緯がある。それにもかかわらず,その後も商品先物取引業者が同規定を潜脱し,個人顧客に対し金の現物取引やスマートCX取引(損失限定取引)を勧誘して接点を持つや,すぐさま通常の先物取引を勧誘した結果,現在においても,多額の損失を与える被害が少なからず発生している実情がある。

本省令により商品先物取引の不招請勧誘が事実上解禁されることになれば,以前のように商品先物取引業者の違法・不当な勧誘により,個人顧客が深刻な損失を被る事例が多発することが強く危惧される。

5.このように,本省令はこれまでの不招請勧誘禁止規定の立法経緯及び被害実態を軽視し,法律の委任の範囲を超えて商品先物取引の不招請勧誘を事実上解禁するものであって,消費者保護の観点から到底許容することができない。

当会は,本省令の制定に強く抗議するとともに,2015(平成27)年6月1日に予定される本省令の施行に強く反対するものである。

 

2015(平成27)年3月17日

鹿児島県弁護士会 会長 堂 免 修

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