決議・声明

公選法違反事件に対する会長声明

2006.08.03

鹿児島地方裁判所は、本年7月27日、志布志の公職選挙法違反被告事件(以下、「本件事件」という)において、検察官が取調請求をしていた被告人6名の自白調書について、自白の任意性を認め、ほとんど全て証拠採用する旨の決定を行った。また、裁判所は、被告人との接見内容を記載した供述調書も全て採用する旨決定した。

本件事件では、被告人と弁護人との接見状況を聞きだした調書をもとに第1回公判期日直前に検察官が国選弁護人2名の解任請求を行い、裁判所も安易にこれに追随するという事件が発生したことから、当会としては、弁護活動に対する重大な侵害行為であるとして、検察庁及び裁判所に対して抗議をし、その後、国選弁護人の推薦を一時停止するなどの対抗措置を取った。また、公判手続きにおいて、捜査機関が組織的に弁護人と被告人(被疑者も含む。以下同じ)との接見直後、その内容を被告人から詳細に聞き取っている事実が判明したことから、当会は、弁護活動に対する重大な侵害行為であるとの思いから、接見侵害についての弁護人らを原告とする国家賠償請求訴訟に対して支援決議をした。この支援の輪は、九州管内はもとより、全国に広がっているところである。

本件事件において、弁護側は、捜査機関が被告人らに対し過酷で執拗な取調べを行った点や接見交通権を侵害した点等数々の違法性を主張した。そのため、公判廷において自白の任意性をめぐる立証が積み重ねられ、平成15年7月3日の第1回公判以降、先の決定が出るまで実に3年間がこの審理のために費やされた。

このような特異な経過を辿ったことから、本件決定についてはマスコミを初め多くの関係者から注目を集めてきたところである。先に述べたとおり、鹿児島地方裁判所は、弁護側の自白には任意性がないこと、及び接見内容を記載した供述調書は違法であり証拠から排除されるべきである旨の主張について、何ら理由を示すことなく、検察官の主張を認め、証拠採用の決定を行った。これでは、捜査機関は同じような捜査活動を将来にわたり繰り返すことになり、人権保障の最後の砦であるべき裁判所が、自らその責務を放棄したものと言わざるをえない。

当会としては、弁護人と被告人との接見交通権を侵害した事実について、引き続きその違法性を訴えていくことを強く決意するものである。また、先にみたとおり自白の任意性をめぐり長期の審理を要したのは、取調過程の可視化が実現されていないからに他ならない。そこで、当会としては、検察官の判断による裁判員裁判対象事件、及び検察官取調べにおける録画の試行ではなく、諸外国が既に実施しているように、全ての事件について、かつ警察官取調べ及び検察官取調べを問わず、全ての取調べについて録画・録音を実施するよう、国及び県に対して改めて強く求めるものである。

鹿児島県弁護士会 会長 川村 重春

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