決議・声明

全面的な国選付添人制度の実現を求める決議

2011.02.12

 少年審判手続において、弁護士付添人は、少年法の目的である「少年の健全な育成」を期するため、少年に対して内省を深めさせ、少年と保護者との関係を調整して家庭環境を整え、学校や職場に社会復帰後の受け入れを働きかけ、被害者に対する示談交渉等を行うなど、少年の立ち直りに向けた支援活動を行うとともに、えん罪を防ぐ役割を担っている。
 日本弁護士連合会は、財団法人法律扶助協会により1973年から少年付添人扶助を開始し、1995年の総会決議で会員の特別会費による少年保護事件付添援助制度を設けて私選付添人費用を援助してきた。当会は、2003年から年少当番付添人制度を導入し、観護措置決定により少年鑑別所に収容された16歳未満の少年が弁護士との面会を希望すれば、少年に経済的負担をさせることなく弁護士付添人を付ける運用を行い、2010年6月にこの制度を拡大して、少年鑑別所に収容された少年が弁護士との面会を希望すれば、当番付添人が速やかに面会に赴き、日弁連の上記援助事業を利用してそのまま付添人として受任する全件当番付添人制度をスタートさせた。
 この間、少年法は、2000年の改正で検察官関与決定のなされた事件を対象に国選付添人制度を設け、2007年の改正で検察官関与がなくても、①故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪、②死刑又は無期若しくは短期2年以上の懲役若しくは禁錮にあたる罪につき、家庭裁判所が弁護士付添人の関与を必要と認めるときに限定して、制度の対象を拡大した。
 一方、刑事事件については、被告人国選に加えて、2004年に法定合議事件を対象にして被疑者国選制度が創設され、2009年には必要的弁護事件に対象が拡大された。
 少年については、ともすると取調べで強制や誘導に屈してしまう危険性があり、成人に比べて自らを防御する能力が弱いので、弁護士付添人が少年審判手続に関与する必要性は、成人の刑事事件以上に高い。ところが、成人の刑事事件では被告人に対する弁護人の選任率が98%を超えるのに対し、少年の審判手続では弁護士付添人の選任率がきわめて低い。のみならず、少年については、捜査段階で被疑者国選弁護人が選任されていたのに、その後家庭裁判所に送致されると国選付添人が選任されないケースが生じ、いわば「置き去りにされた少年」という制度上の矛盾が表面化している。
 弁護士会による全件当番付添人制度は、弁護士付添人選任率を飛躍的に増大させ、少年の立ち直りに向けた多くの成果を期待できる。しかしながら、適正手続を確保しつつ少年の健全な育成を図ることは、本来国の責務であり、国費によって全面的な弁護士付添人制度が運営されるべきである。わが国が批准している子どもの権利条約の第37条(d)は、「自由を奪われたすべての児童は、・・・弁護人その他適当な援助を行なう者と速やかに接触する権利を有する」と定めている。少年が国費によって弁護士付添人による十分な法的援助を受けられる制度は、速やかに整備、拡充されなければならない。
 よって、当会は、国選付添人制度の対象事件を身体を拘束された少年の全件に拡大するよう、速やかな少年法の改正を求める。

 以上のとおり、決議する。
     2011年2月12日
          鹿児島県弁護士会臨時総会

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