決議・声明

いわゆる「谷間世代」のために不公平・不平等の速やかな是正措置の実施を求める会長声明

2018.05.22

1. 司法修習生に給与を支給する給費制は、司法試験に合格し裁判官・検察官・弁護士を目指す者が同じ内容を受ける統一司法修習制度とともに戦後60年以上にわたり存続してきた。日本国憲法下において、法の支配を実現し国民の権利を擁護する司法の役割が強化され、司法の担い手である法曹を国の費用負担と責任で養成することがひいては国民の権利を擁護することに資するからこそ給費制が採用されていた。
2. しかし、給費制は2011年、平成の司法制度改革の中で財政的事情を理由に廃止され、司法修習生の修習に必要な費用を最高裁判所が貸与する制度が導入された。これにより司法修習生は、修習期間中も将来にわたる経済的負担不安を抱えざるを得ず、安心して司法修習に専念することが困難になった。さらにいえば、法曹になるための経済的負担が重くなったことは、近時の法曹志願者の激減の重大な要因ともなった。
当会は、2016年1月20日付で司法修習生に対する給付型の経済的支援を求める会長声明を発表したところであるが、司法修習生の地位の重要性と貸与制導入の悪影響が理解され、2017年4月19日には、裁判所法改正により貸与制に代わり司法修習生に対し基本給付金及び住宅給付金を支給する修習給付金制度が創設された。これにより司法修習生に対する無給の状態は改善されたものの給付金支給の遡及的な適用は見送られた。その結果として、2011年度から2016年度に採用された、給費制と給付金制度の狭間で貸与制該当者として給費や給付金を受けることができなかった新第65期から第70期までの司法修習修了者、いわゆる「谷間世代」の者(以下、「谷間世代」という。)については具体的な是正策が講じられないまま不公平・不平等が生じている。
3.  「谷間世代」も修習専念義務を負って司法修習を終えた点で他の世代の法曹と変わるところはなく、法曹実務の中で司法の担い手として国民の権利擁護と社会正義の実現のために公共的・社会的活動を行っている。一方、「谷間世代」の多くは、大学・法科大学院時代の奨学金を抱えており、貸与制に基づく貸与金(平均約300万円)の返還が始まれば、経済的事情等により、これまで同様に公共的・社会的活動に十分取り組めないおそれがある。「谷間世代」の法曹(裁判官・検察官・弁護士)の数は約1万1000人に達し,法曹全体(前同)の数約4万3000人の約4分の1を占めている。「谷間世代」に対する具体的な是正策を講じないままこの問題を放置してはならない。「谷間世代」の法曹が、その能力と意欲をいかんなく発揮して国民の権利擁護と社会正義の実現のために活躍できるようにするために「谷間世代」に対する具体的な是正策の実施が必要不可欠である。
4.  以上の次第で、当会は,最高裁判所、法務省及び国会に対し、「谷間世代」の経済的負担が旧第65期以前及び第71期以後の司法修習修了者に比して著しく重いという不公平・不平等な事態を解消すべく一律給付などの具体的な是正措置を講ずることを求める。そして、いったん貸与制度に基づく貸与金の返還が始まれば、「谷間世代」における不公平・不平等を解消することが複雑化し困難になることは明らかであるので「谷間世代」の最初の貸与金返還が開始する本年7月25日までに上記の具体的な是正措置が講じられない場合、当該是正措置が講じられるまでの間貸与金の返還期限を一律猶予する暫定的な措置を講ずることを求める。

2018(平成30)年5月22日
鹿児島県弁護士会
会 長 上 山 幸 正

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