決議・声明

少年法適用年齢引下げに対し改めて反対する会長声明

2020.02.28

1 はじめに

法制審議会「少年法・刑事法(少年年齢・犯罪者処遇関係)部会」では,平成29年3月16日以降23回の会議(令和2年1月31日現在。分科会や期日外視察を除く)が開催され,少年法の適用年齢を18歳未満へ引き下げることの是非が議論されている。

当会は,平成27年6月30日付けで少年法適用年齢の引下げに反対する会長声明を発表しているが,近時,上記部会において少年法の適用年齢を引き下げる方向の議論が一層進められつつあることから,今回,改めてこれに反対するものである。

 

2 少年法の適用年齢は引き下げられるべきでないこと

現行少年法は,その制定から70年を経過しているが,きわめて有効に機能しており,少年非行の減少・非凶悪化に大きく寄与してきた。

すなわち,現行少年法は,成長途中の少年に対して,刑罰ではなく,教育による非行からの立ち直りをその理念・目的としており,非行があったとされる少年はすべて家庭裁判所に送致され,専門的知見を有する家庭裁判所調査官によって少年の資質や成育歴,家庭環境等をきめ細かく調査し,少年の立ち直りのために必要な保護処分を判断する仕組みとなっている。

平成30年の犯罪白書によれば,現行少年法の下,少年の刑法犯の検挙者数は平成16年以降毎年減少し,平成29年には昭和58年のピーク時の約13%にまで減少(約87%減)している(少年人口比でも昭和56年のピーク時の約21%にまで減少(約79%減))。また,少年による殺人・強盗・放火・強姦(強制性交等)の「重大犯罪」についても,平成29年には,昭和35年のピーク時の約6%にまで減少(約94%減)している。このように,少年非行は増加しておらず,それどころか「重大犯罪」を含め大きく減少している。

このように,現行少年法の保護処分は,少年非行の減少・非凶悪化に有効に機能してきたのであって,18歳,19歳の少年をあえて現行少年法の適用対象から外す必要性は全くない。

なお,法制審における議論においても,現行少年法による保護処分がこれまで有効に機能してきたことについては,引下げ賛成派も含め,異論がない。

 

3 適用年齢引下げ賛成派の引き下げの根拠

上記部会での少年法適用年齢の引下げを進める立場の根拠としては,主に,

① 現行少年法の保護処分は,少年の健全育成を目的とするが,民法の成年年齢が18歳に引き下げられた場合,このような民法上の「成年者」に対する国家による後見的な介入は過剰な介入である,

② 法律において成人として取り扱われる年齢は一致する方が国民にとって分かりやすく,18歳の者に対して成人としての自覚を促す上でも適切である,

③ 少年法の適用年齢を引き下げたとしても,その適用から外れる18歳,19歳の者については,家庭裁判所に送致して現行少年法と同様の処分を行なうことを可能にする,いわゆる「若年者に対する新たな処分」により,20歳以上の者と異なった処遇をして対応することが考えられる,

ことを挙げる。しかし,以下に示すとおりこれらの理由はいずれも少年法の適用年齢を引き下げる理由にはならない。

 

4 適用年齢引下げ賛成派の引き下げの根拠には理由がないこと

(1) 過剰な介入であるとはいえないこと

パターナリズムによる国家の介入が許容される年齢は,一律に決定されるものではなく,その介入の必要性や介入の内容・性質によって異なる。20歳未満の者への飲酒・喫煙・ギャンブルの禁止も,「健康被害防止」「非行誘発の防止」「青少年保護」など,本人の利益を護るという観点からのパターナリズムによる国家の介入であって,民法上の「成年者」に対する介入を許容することとしている。たしかに,少年法による介入は,身体拘束も含むものであって,その程度は大きいとはいえるが,他方で,未成熟で可塑性の高い少年に対する更生や社会復帰の効果は大きく,当該少年にとって利益になるから,民法上の「成年者」であっても,これを保護処分の対象とすることが「過剰な介入」になるわけではない。

(2) 少年法の適用年齢と民法の成年年齢を一致させる必要はない

法律の適用年齢は,それぞれの法律の立法趣旨に照らし個別の法律ごとに具体的に検討すべきものである。少年法の立法趣旨は,心身の発達が未成熟で可塑性に富む少年に対しては,刑罰よりもむしろ保護処分によりその教化を図るべきという点にあり,民法が成年年齢を定める趣旨とは大きく異なる。上記②の根拠にある,分かりやすさなどは少年法の適用年齢を引き下げる根拠とはなりえない。

(3) 「若年者に対する新たな処分」は現行少年法の代替手段とはなりえない

そもそも,上記③の「若年者に対する新たな処分」という18歳,19歳の者に対する現行少年法の処遇に近づける代替手段が検討されているのは,民法上の「成年者」となるそれらの者に対して現行少年法で行なわれている国家の後見的な教育的処分を実施する必要性を認めているからであって,その検討を要すること自体が少年法の適用年齢を引き下げる必要のないことの表れである。

その点は措くとしても,「若年者に対する新たな処分」は,その具体的内容については現在法制審の中でも様々な案があるところではあるが,当該若年者は20歳以上の者と同様に刑事罰の対象とされるため,基本的にはその者の行為責任に応じた処遇とせざるを得ない以上,現行少年法の保護処分と同様の健全育成目的による手厚い処遇を行うには限界があると考えられる。また,同様に行為責任の観点から,虞犯少年はその処分の対象外となり,現行少年法の処遇からは制度的に後退するものとならざるを得ないものと考えられる。

このように,「若年者に対する新たな処分」は,現行少年法の処遇の代替手段とはなりえないし,適用年齢の引下げという結論ありきの議論の辻褄合わせに思われてならない。

 

5 結語

以上のとおり,現在有効に機能している少年法の適用年齢を引き下げる必要は全くなく,むしろ,引下げによる弊害が大きい。

当会は,前回の少年法適用年齢引下げに反対する会長声明発表後,当会主催の下,平成30年10月20日に少年法適用年齢引下げ問題を考えるシンポジウムを開催するなどし,議論・検討を重ねてきた。今回,これらの議論を踏まえた上で,少年法の適用年齢引下げに対し改めて強く反対するものである。

なお,令和2年1月20日召集の第201回国会(常会)への少年法の改正法案の提出は見送られたが,今後も法制審議会における審議は継続されるところ,当会としては,今後も少年法の適用年齢の引下げについて反対するとともに,世界に誇る我が国の少年司法システムの維持発展への貢献と,市民の理解の促進に努める所存である。

 

2020(令和2)年2月28日

鹿児島県弁護士会

会長 笹 川 理 子

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