決議・声明

最低賃金の大幅な引き上げを求める会長声明

2017.02.23

第1 声明の趣旨
当会は,中央最低賃金審議会及び鹿児島地方最低賃金審議会に対し,最低賃金額を大幅に引き上げて,最低でも時給1000円以上の金額を答申することを求めるとともに,鹿児島労働局長に対し,最低賃金額を大幅に引き上げて,最低でも時給1000円以上の金額を決定することを求める。

第2 声明の理由
1 平成28年7月28日,中央最低賃金審議会は,厚生労働大臣に対し,今年度地域別最低賃金額改定の目安についての答申を行った。その内容は,今年度の最低賃金の引き上げの目安額を全国の加重平均額で24円とするもので,鹿児島県の目安はDランクの21円とされている。
かかる決定を受け,各都道府県の最低賃金審議会が地域ごとの引き上げ額の答申をしており,鹿児島最低賃金審議会は,平成28年8月5日,引き上げ額を21円とし,最低賃金額を時間額715円とする答申をしている。かかる答申を受け,鹿児島労働局長は,同年10月1日から最低賃金額を時間額715円に改正することを決定した。
しかしながら,鹿児島県における上記最低賃金の引き上げは,不十分なものであり,早急に最低賃金額の大幅な引き上げを実現する必要がある。

2 我が国における最低賃金制度とは,「賃金の低廉な労働者について,賃金の最低額を保障することにより,労働条件の改善を図り,もって,労働者の生活の安定,労働力の質的向上」等を目的とするものである(最低賃金法第1条)。
しかしながら,今回の最低賃金の引き上げ額は,「労働者の生活の安定」にも「労働力の質的向上」にもつながるものではなく,不十分と言わざるを得ない。
すなわち,時間額715円という水準では,厚生労働省の毎月勤労統計調査結果(平成28年4月分結果発表)である175.0時間を前提に試算を行っても,月収12万4950円,年収149万9400円にしかならず,いわゆるワーキングプアのラインとされる年収約200万円(時給換算で約1000円)に遠く及ばない。
これでは,労働者が健康で文化的な生活を営んだ上で,最低限の資産を形成することなどできず,労働者の生活の安定及び労働力の質的向上を図ることなど到底望めない。

3 また,厚生労働省による平成24年国民生活基礎調査によると,貧困率(等価可処分所得が全人口の中央値の半分未満の者の率)は,過去最悪の16.1%まで悪化している。
最低賃金の額が,性別や世代を問わず我が国で深刻化している貧困問題に直結していることは言うまでも無く,国民の賃金格差を是正し,貧困問題を解決するためにも,最低賃金の大幅な底上げを実現せねばならない。

4 さらに,政府は,平成22年6月18日に閣議決定された「新成長戦略」において,最低賃金時間額の全国平均を,平成32年までに1000円にする目標を明記しており,当該目標は現在でも維持されている。
しかしながら,上述のとおり,鹿児島における最低賃金時間額は715円にとどまり,平成32年までに285円以上の引き上げを行わない限り,政府の掲げる最低賃金時間額全国平均目標に達することができない。
仮に,鹿児島県の最低賃金と政府の掲げる最低賃金時間額全国平均目標との間に,大きな乖離が生じてしまった場合,鹿児島県と他県との賃金格差が大きくなり,他県への人口流出を招く危険性がある。
反面,最低賃金の引き上げの効果として,賃金が県内消費に回ることで,地域経済成長を刺激するというメリットも考えられる。

5 以上の理由で,中央最低賃金審議会及び鹿児島地方最低賃金審議会に対し,最低賃金額を大幅に引き上げて,最低でも時給1000円以上の金額を答申することを求めるとともに,鹿児島労働局長に対し,最低賃金額を大幅に引き上げて,最低でも時給1000円以上の金額を決定することを求める。

2017年(平成29年)2月23日
鹿 児 島 県 弁 護 士 会
会 長  鑪 野 孝 清

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