決議・声明

いわゆる共謀罪法案の衆議院通過に反対する会長声明

2017.06.13

平成29年6月9日
鹿児島県弁護士会
会長 馬場竹彦

政府により今国会に提出されたいわゆる共謀罪の創設を含む組織的犯罪処罰法改正案(以下「本法案」という。)は、本年5月23日、衆議院本会議において自民党、公明党、日本維新の会等の賛成多数で可決され、衆議院を通過した。
当会は、本年3月10日付けで「新たな共謀罪法案の国会提出に反対する会長声明」(以下「当会声明」という。)を公表している。その中で、いわゆる共謀罪法案は、我が国の刑事法体系の基本原則である行為処罰・既遂処罰の原則に反するものであり、その要件として新たに規定される「準備行為」は日常的な行為を含む広範な行為が該当し得るもので処罰範囲の限定足りえず、犯罪遂行の合意を処罰する従前の共謀罪法案と本質は変わらないこと、また、新たに規定される「組織的犯罪集団」及び「準備行為」はその概念が極めて曖昧であるが故に捜査機関の恣意的な解釈・運用を許し、その取締りのために盗聴等の人権侵害のおそれがある捜査手法が広く用いられ、市民に対する「心の中の監視」がはびこる社会を招来し、表現の自由や思想・内心の自由を侵害し、ひいては民主主義の根幹を揺るがしかねないこと、さらに政府が創設の根拠とする「国連越境組織犯罪防止条約」はテロ防止を目的とするものではなく、テロ対策には現行法による対応が可能であるにもかかわらず、同法案の適用対象となる犯罪は676に上り、これを半分以下に減らしたとしても、かかる広範な処罰規定を新設する必要性や刑罰法規としての明確性に重大な疑問が存すること等を指摘した。
これに対し、本法案は、当会声明が前提とした内容に比べ、①「資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための」準備行為が必要とされ、準備行為は計画に「基づき」行われることを明記している点、②犯罪主体を「テロリズム集団その他の」組織的犯罪集団と規定する点、③対象犯罪が676の犯罪から277の犯罪にまで減じられている点が異なっているものの、その実質は何ら変わっていない。
すなわち、①「資金又は物品の手配」等は例示に過ぎず、また、特に予備以前の段階の行為につき「計画をした犯罪を実行するため」であるか行為の外形から判断することは困難であるから、これらは準備行為の概念を限定する機能を果し得ず、日常的な行為に至るまで広範な行為が該当するおそれのあることに変わりはない。故に、準備行為が「計画に基づき」行われるものに限定したとしても、依然として処罰範囲を限定し得ないのであり、犯罪遂行の合意を処罰するこれまでの共謀罪法案とその本質は何ら異なるものではない。
また、②「テロリズム集団」も例示として掲げられているに過ぎず、「組織的犯罪集団」の概念を限定する役割を果し得ず、捜査機関の恣意的な解釈・運用を許し、ひいては、「準備行為」概念の不明確さと相俟って市民の表現の自由や思想・内心の自由を侵害するおそれがあることに変わりはない。
さらに、③対象犯罪が277に限定されたとしても、依然としてテロ犯罪や組織犯罪と無縁の犯罪が対象とされているうえ、テロ対策には現行法にて十分対応可能であるのに何故かかる広範な処罰規定を新設する必要があるのか,そもそもの立法事実の有無に対する疑問は何ら払拭されていない。
以上より、当会声明が指摘した問題点は、本法案においても妥当する。
本国会の衆議院法務委員会における30時間余りの審議においても、上記各点を含む本法案の問題点につき質疑が行われたが、政府答弁は不明瞭な内容に留まり、本法案に対する疑問が払拭されたとは言い難い。かかる状況のまま本法案が衆議院を通過したことには強い危機感を抱く次第である。
このように、本法案は、当会声明の指摘するとおり、刑事法の根幹である行為処罰・既遂処罰の原則に反し、憲法の定める表現の自由や思想・良心の自由を侵害するおそれの強いものである。したがって、当会は、本法案の衆議院通過に強く反対するものである。

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