決議・声明

「共謀罪」の新設に反対する会長声明

2005.10.26

1 政府は、第162回国会で廃案となった「犯罪の国際化及び組織化に対処するための刑法等の一部を改正する法律案をこの特別国会に再び上程した。この法律案には「共謀罪」又は「謀議罪」と呼ばれる新たな犯罪を新設する規定が盛り込まれている。
2 共謀罪(謀議罪)は、長期4年以上10年以下の刑を定める犯罪について、団体の活動として当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を共謀した者を2年以下の懲役又は禁錮の刑に処するものとし、死刑又は無期若しくは長期10年を超える刑を定める犯罪に関する共謀については5年以下の懲役又は禁錮とする加重規定も設けられている。
3 今回新設されようとしている共謀罪は、「共謀」それ自体を独立の犯罪とするものであり、このような主観的な事実だけで犯罪とするのは、客観的事実である実行の着手を犯罪成立の絶対要件とする近代刑法の基本原理である客観主義を根本から否定するものである。
  現在においては全ての犯罪で「未遂」を処罰するわけではなく、「予備」の処罰もごく限られている。ところが、本法律案の共謀罪では、未遂・予備でさえ処罰されない広範な犯罪について「共謀した」だけで処罰されるのである。このような法律案は、刑法そのものを大改訂するに等しいといわなければならない。
4 そもそも同法律案は、我が国も批准している「国際的な組織犯罪の防止に関する国際連合条約」の国内法化のための立法であるとされているところ、同条約第3条1項は条約の適用範囲として「性質上越境的なものであり、かつ、組織的な犯罪集団が関与するもの」として対象団体を限定しているが、本法律案にいう「団体」はこのようなものに限られていない。それはきわめて幅広く、政党、NPO等の市民団体、労働団体、企業等もそこに含まれるため、共謀罪規定を根拠にこれらの団体が取り締まりの対象となる虞がある。
  また、同条約は第5条1項において、締結国が取らなければならない立法措置の要件として「金銭的利益その他物質的な利益を得ることに直接又は間接に関連する目的のために重大犯罪を行うこと」を求めている。しかしながら、本法律案の共謀罪は、かかる限定のない規定となっているばかりか、死刑、無期を含む長期4年以上の犯罪にその適用が広げられており、その対象犯罪の罪名は500を超えているのである。
  このように本法律案の共謀罪新設規定は、条約本来の趣旨から逸脱するものであるのみならず、犯罪の構成要件が広汎かつ不明確で、罪刑法定主義に反し、刑法の人権保障機能を根本から破壊する虞がある。

5 以上のとおり、本法律案の共謀罪新設規定は、条約の要求する範囲を完全に逸脱し、かつ、刑法の基本原理を根本的に否定するものであり、このような立法がなされることは基本的人権保障の観点からは極めて危険な憂慮すべき事態を招来する虞が高い。
  よって当会は共謀罪の新設に強く反対するものである。

以上

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