お知らせ

労働者派遣法改正案に反対する会長声明

2015.05.22

 

第1 声明の趣旨

現在通常国会において審議中である,労働者派遣法改正案に反対する。

 

第2 声明の理由

1 改正案の内容

(1) 平成27年3月13日,厚生労働省は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律案」(以下「改正案」という。)を第189回通常国会に再度提出し,現在国会で審議中である。

(2) 改正案は,特に派遣労働者の派遣期間の規制に関し,以下のとおり改めようとするものである。

まず,改正案は,派遣元事業者で有期雇用されている派遣労働者に関し個人単位と派遣先事業所単位で派遣期間に制限を設け,いわゆる26業務か否かにかかわらず,①個人単位の期間制限として,派遣先の同一の組織単位(課)における同一の派遣労働者の受入れの上限年数を3年とし,併せて,②派遣先事業所単位の期間制限として,派遣先の同一事業所における派遣労働者の受入れの上限期間を3年としている。

その一方で,改正案は,①の個人単位の期間制限について,派遣期間の上限に達した派遣労働者に対し,派遣労働者が引き続き就業を希望する場合には,派遣元事業者は一定の雇用安定措置を講じなければならないとし,②の派遣先事業所単位の期間制限については,派遣先が事業所における派遣労働者の受入れ開始から3年を経過するときまでに,当該事業所における過半数労働組合等から意見を聴取することで更に3年間派遣労働を受け入れることができるものとすることを認めている。

2 改正案の問題点

(1) 厚生労働省は,改正案について,派遣労働を臨時的・一時的な働き方と位置づけ,派遣先の常用労働者との代替が生じないよう,派遣労働の利用を臨時的・一時的なものに限るものとしている。

しかし,上記の措置内容に従って同法が改正されることになれば,以下のとおり,無期か有期かにかかわらず,すべての労働者派遣において常用代替防止の原則が事実上放棄され,企業が一般的恒常的業務について派遣労働者を永続的に利用できることとなり,労働者全体の雇用の安定と労働条件の維持,向上が損なわれることが予想される。

その理由は以下のとおりである。

(2) まず,改正案は無期雇用の派遣労働者については派遣期間制限の規制対象から除外している。

しかし,派遣労働者の雇用条件は派遣先事業者の意向に左右されざるを得ない。そのため,派遣労働者が派遣元で無期雇用されているからといって,その雇用が安定しているとはいえないし,十分な労働条件が保障されているということもできない。

それにもかかわらず,無期雇用の派遣労働者について一律に派遣期間制限の規制を除外することで,直接雇用の労働者が十分な労働条件が保障されない派遣労働者に置き換えられ,常用代替を促進することになりかねない。

(3) また,有期雇用の派遣労働者に対する派遣期間の規制も常用代替防止の観点からは不十分である。なぜなら,上記の規制では,結局のところ,派遣先及び派遣元事業者が3年経過するごとに派遣労働者を入れ替えれば派遣労働を継続して使用することが可能となり,常用代替防止の理念は果たされないからである。

それだけでなく,派遣労働者に対する雇用安定措置についても改正案の内容には実効性がない。すなわち,改正案は,派遣元事業者が講ずるべき措置として,ア 派遣先への直接雇用の依頼,イ 新たな就業機会(派遣先)の提供,ウ 派遣元事業者における無期雇用,エ その他安定した雇用の継続が確実に図られると認められる措置のいずれかを講ずることとしている。

しかし,ア及びイについては,派遣先事業者が派遣労働者を受け入れる意向がない場合には実効性はない。また,ウについても,派遣元事業者が派遣労働者を改めて無期雇用で使用することは考えにくい。さらに,エについては内容が不明確で派遣元事業者が具体的にいかなる措置を講ずるべきかが判断できない。

これらのとおり,改正案が述べる雇用安定措置はいずれも実効性がない。

(4) 加えて,前記②についても,派遣労働者の受入れ期間の延長に当たって,派遣先事業者は過半数労働組合等から意見聴取すれば足りるとされるところ,36協定締結や就業規則改定における労働者過半数代表の意見聴取制度が多くの事業所で形骸化してしまっている我が国の現実からすれば,派遣労働者の受入れ上限期間を幾らでも延長されるおそれが強く,常用代替防止を図る実効性はない。

 

第3 結語

以上のとおり,改正案の内容は常用代替防止の観点から極めて問題が多い。

そのため,当会は,労働者派遣法改正案に反対するとともに,常用代替防止を実現し,労働者の雇用の安定を確保できる法制度の整備を行うよう求める。

 

平成27年5月12日

鹿児島県弁護士会

会長 大 脇 通 孝

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