決議・声明

未決拘禁法案の衆議院可決についての会長声明

2006.04.26

本年4月18日、「刑事施設及び受刑者の処遇等に関する法律の一部を改正する法律案」(以下「本法案」という)が衆議院本会議で与党などの賛成多数で可決され、参議院に送付された。
本法案については、代用監獄を存続させていること、未決拘禁者の処遇原則として「無罪推定を受けるにふさわしい処遇」を規定していないこと、未決拘禁者と弁護人との接見や外部交通に不要な制限があること等多くの問題があり、とりわけ、代用監獄を存続させながら、その廃止の方向性を明示していないことについて、抜本的見直しをするように厳しい批判にさらされていたにも拘わらず、拘置場の増設や代用監獄への収容を段階的に減らすよう求める漸減条項を法案に規定せず、これを附帯決議とするにとどまった。
しかしながら、附帯決議に法的拘束力はなく実効性はあまり期待できない。これでは、代用監獄をより恒常的な施設にする根拠を与えることになる。
いうまでもなく、代用監獄は、取調べの便宜・効率のために被疑者を警察の留置場に拘禁する制度であり、自白強要の道具として使われ、冤罪の温床と言われてきた。捜査を行う警察の手によって、被疑者が社会生活と情報から遮断され、睡眠、食事、用便に至る全生活が管理されるとき、そこには支配・被支配の関係が形成され、たとえ、特別な暴行・脅迫がなくても、虚偽自白への強い圧力が生じる。取調べの可視化(録画、録音等)だけでは解消しない代用監獄特有の問題が残るのである。現に、鹿児島における志布志選挙違反事件においても、長期間かつ長時間に及ぶ身柄を拘束した上での自白取得や弁護人との信頼関係に介入することによる自白維持がなされており、このような代用監獄の弊害が強く叫ばれているところである。
このような弊害があるため、代用監獄は国連の人権規約委員会から2度にわたり廃止に向けた勧告がなされるなど、国内外から厳しく批判されてきた。しかるに、本法案は、代用監獄をそのまま存続させ、警察部門と留置部門の分離、留置施設委員会の設置等による処遇の適正化確保にとどまっており、捜査のための拘禁の利用という代用監獄の弊害を正面から解消するには至っていない。
鹿児島弁護士会は、今回の未決拘禁法の立法にあたり、代用監獄の廃止の方向性が明示され、かつ廃止に至るまでの間、拘置場の増設や代用監獄への収容を段階的に減らすよう求める漸減条項を法案に規定されることを強く求めるものである。

2006(平成18)年4月26日
鹿児島県弁護士会
会長:川村重春

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