決議・声明

秘密交通権侵害国賠訴訟の判決についての会長声明

2008.03.24

鹿児島地方裁判所は、本日、秘密交通権侵害国家賠償請求事件について、国および鹿児島県に対して、原告ら弁護士11名の全員に、捜査機関による弁護人の被疑者・被告人との秘密交通権の侵害があったとして、合計金550万円を支払うよう命じる判決を言い渡した。

この事件は、2003年4月13日施行の鹿児島県議会議員選挙に関して、立候補予定者の選挙運動に関し、買収会合で現金を配ったという、全く存在しない嫌疑で身体拘束された被疑者・被告人と、それらの弁護人であった上記弁護士らとの接見について、捜査機関が接見内容そのものを被疑者被告人から直接聴取したことが違法であるとして、国および鹿児島県に対して国家賠償を求めたものである。

この訴訟で国および鹿児島県は、接見内容を聴取し調書化したのは、弁護人が自白している被疑者・被告人に捜査妨害行為をしたからであるといい、あるいは被疑者・被告人が自発的に供述したからであるといって、国および鹿児島県の行為に違法性はないと主張していたが、鹿児島地方裁判所は、本日の判決においてこれらの主張をいずれも排斥し、違法性を明確に認定した。
鹿児島県弁護士会は、秘密交通権の重要性に鑑み、捜査機関が被疑者・被告人と弁護人との接見交通の内容を知ることは一切許されないと主張してきた。これは次のような理由による。

すなわち、被疑者・被告人を、犯人であるという前提に立って取調を行う捜査機関との関係において、被疑者・被告人が、自ら適切かつ効果的に防御権を行使することは、きわめて困難である。そのような被疑者・被告人に対して、法的な観点から助言を行い、場合によっては被疑者・被告人の無実を明らかにする役割を担うのが弁護人である。そして、接見交通とは、被疑者・被告人と弁護人が防御権を適切かつ効果的に行うための情報をやりとりする場なのであって、その内容が捜査機関に筒抜けになるとするならば、弁護人と被疑者・被告人との信頼関係を形成することはできず、弁護も名ばかりとなる。
そこで、被疑者・被告人と弁護人との接見交通の内容は捜査機関に対して秘密でなければならず、そして、接見交通の内容の重要性に鑑みたとき、その内容の秘密は絶対的に保障されなければならない。

このような理由から、鹿児島県弁護士会は、秘密交通権には絶対的な保障が及ぶと主張してきた。
本判決が、被疑者被告人との接見内容を聴取することは、原則として弁護人の接見交通権を侵害するとして、例外が認められる余地を残したことについては、弁護士会の立場からは尚不満が残るところではあるが、被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権保障は、弁護人の固有権であるとして、被疑者・被告人による放棄を認めなかったことや、結論として国及び鹿児島県の主張をすべて排斥したことは、今回の捜査機関の聴取行為に対して明確に違法であるとの判断を示したこととして評価するところである。

鹿児島県弁護士会としては、今後とも、捜査機関による被疑者・被告人と弁護人との秘密交通権侵害を断じて許さないための弁護活動を実践する努力を重ねるとともに、これを確立するべく取調の全過程の録画・録音(可視化)を実現するために全力を傾注し、えん罪根絶のために最大限の努力をする所存である。

平成20年(2008年)3月24日

鹿児島県弁護士会
会長 上野英城

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