決議・声明

司法修習生に対する給与支給の継続を求める会長声明

2009.07.02

裁判所法の改正(裁判所法67条の2修習資金の貸与等)により、2010年(平成22年)11月から、司法修習生に対する給与支給制度(以下「給費制」という)を廃止し、修習資金を国が司法修習生に貸与する制度(以下「貸与制」という)が実施される。

この改正は、厳しい財政状況を背景として、国家公務員の身分を有しない者に対する支給が極めて異例の取扱いであることや、司法修習は個人が法曹資格を取得するためのものであるから、それに必要な経費は修習生個人が負担すべきであること(受益者負担)などを理由とするものであった。

しかしながら、司法修習制度は、司法試験合格者が直ちに国民の権利・義務に大きな影響を与える法曹(裁判官、検察官、弁護士)となり実務に就くことは妥当ではないとの判断のもと、統一・公平・平等の理念によって法曹を養成し、質の高い法曹を生み出すことを目的として設けられた制度であるところ、このような司法修習制度は、司法修習生の労働の権利を制限する代わりに給与を支給するという給費制を採用することによって彼らに修習専念義務を課して、これまで62年間の長きにわたり実施され、所定の成果を上げてきたものである。

このように、給与制によって支えられた司法修習制度は司法の人的基盤である法曹養成制度として、法の支配を全国に実現するという極めて公益性の高い価値を担っているものであるから、その費用は、法曹個々人の受益者負担といった個人レベルの枠を遙かに超え、公的使命を負った法曹により国民各自・社会に貢献し還元されていくべきものであり、このことは、法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度下においても全く同様である。

また、貸与制への改正と同時期に始まった公費投入による医師臨床研修制度では、国庫からの補助により民間人である研修医に対する給費制が実施されているが、その社会的役割や公益性からすれば、「国民の社会生活上の医師」(司法制度改革審議会)たる法曹の養成において、修習専念義務を課せられている司法修習生への給費制を医師の場合と別異に扱う理由はなく、国家公務員の身分を有しない者への給費制という異例の取扱いには、医師の場合と同様、極めて合理的な理由があるというべきである。

加えて、2年間ないし3年間の法科大学院における多額の学費や生活費の負担の上に、さらに司法修習生への給費制を廃止することになれば、有為な人材が経済的な事情から法曹への道を断念することにもなりかねない。

当会は、以上のような諸事情に鑑み、今回の司法修習生に対する給費制の廃止は司法修習制度の社会的役割と公益性とを減退させ、法の支配をも危うくしかねないものであると危惧するとともに、法曹養成制度全体の財政支援のあり方につき再検討することが不可欠であると考え、政府、国会、最高裁に対し、2010 年11月1日から実施される司法修習生への修習資金の貸与制を廃止し、これまでの給費制を継続させる措置を執ることを強く求めるものである。

2009年(平成21年)6月30日
鹿児島県弁護士会
会長 森 雅美

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