決議・声明

「大崎事件」第3次再審請求特別抗告審再審請求棄却決定に対する会長声明

2019.07.01

 最高裁判所第一小法廷(小池裕裁判長)は,2019年(令和元年)6月25日,いわゆる大崎事件第3次再審請求事件(請求人原口アヤ子氏等)の特別抗告審につき,検察官の特別抗告には理由がないとしたが,職権により,鹿児島地方裁判所の再審開始決定及び福岡高等裁判所宮崎支部の即時抗告棄却(再審開始維持)を取り消し,再審請求を棄却した(以下「本決定」という。)。

 大崎事件は,1979年(昭和54年)10月,原口アヤ子氏が,原口アヤ子氏の元夫,義弟との計3名で共謀して被害者を殺害し,その遺体を義弟の息子も加えた計4名で遺棄したとされる事件である。逮捕時からの一貫した無罪主張にもかかわらず,確定審では,「共犯者」とされた元夫,義弟,義弟の息子の3名の「自白」,「自白」で述べられた犯行態様と矛盾しない法医学鑑定,共犯者の親族の供述等を主な証拠として,原口アヤ子氏に対し,懲役10年の有罪判決が下された。
 
 原口アヤ子氏は,第1次再審請求において,2002年(平成14年)3月26日,再審開始決定を勝ち取ったが,検察官抗告により同決定が取り消され,その後再審請求棄却決定が確定した。そして第2次再審請求においても,再審への扉は閉ざされていた。

 2017年(平成29年)6月28日,第3次再審請求審の鹿児島地方裁判所(冨田敦史裁判長)は,新証拠である法医学鑑定人,供述心理学鑑定人の証人尋問を行い,証拠開示についても積極的な訴訟指揮を行った上で「殺人の共謀も殺害行為も死体遺棄もなかった疑いを否定できない」と結論づけて,本件について2度目となる再審開始決定をした。同一事件において2度の再審開始決定がなされたのは免田事件以来のことである。これに対しても検察官抗告がなされたが,福岡高等裁判所宮崎支部(根本渉裁判長)も再審開始の結論を維持し,検察官の即時抗告を棄却して,再審開始を認めた。

 ところが,これに対する検察官の特別抗告に対し,最高裁判所第一小法廷は,検察官の特別抗告には理由がないとしたが,職権により原決定及び原々決定の各再審開始を取り消し,再審請求を棄却する本決定を行なった。

 本決定は,これまでに3回も再審開始方向の決定がされており,無辜の救済を目的とする再審手続の中でもとりわけ慎重な判断が求められていたところ,事実調べを行なった原々決定及び確定審の事実認定を詳細に分析した原決定に対し,人権救済の最後の砦であるはずの最高裁判所が書面審理のみで結論を覆し,差し戻すことなく請求を棄却するという前例のないものであり,無辜の救済の理念や「疑わしいときは被告人の利益に」と明言した白鳥・財田川決定を骨抜きにするものと言わざるを得ない。原口アヤ子氏の有罪判決は,供述弱者である共犯者の自白に依拠するものであり,そのことは最高裁判所も前提としているところであるが,それにもかかわらず旧態然として自白偏重の判断をしたことは大変遺憾である。
 本件は,発生から40年の歳月が経過しており,92歳となった原口アヤ子氏を救済するには,必ずや存命中に再審無罪の言渡しを聞かせ,無罪を確定しなければならない。
 当会としては,原口アヤ子氏の無罪を確信しており,原口アヤ子氏の再審開始,再審無罪の獲得に向けて,大崎事件に対する支援を全力で継続していく所存である。

                                                  2019年(令和元年)7月1日
鹿児島県弁護士会
会 長 笹 川 理 子

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