決議・声明

死刑執行に強く抗議し、直ちに死刑執行を停止し、2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める会長声明

2019.09.02

 山下貴司法務大臣は、2019年8月2日午前、神奈川県大和市で2001年に主婦2人を相次いで殺害したなどとして強盗殺人罪などに問われ、死刑が確定した庄子幸一死刑囚(64歳・東京拘置所)と、福岡県で2004~05年に女性3人を殺害し強盗殺人罪などで死刑が確定した鈴木泰徳死刑囚(50歳・福岡拘置所)の死刑を執行した。天皇即位等皇室関連の慶事が続き、恩赦もあり得る中での執行である。
日本弁護士連合会は、2016年10月7日、第59回人権擁護大会において「死刑制度の廃止を含む刑罰制度全体の改革を求める宣言」を採択し、日本政府に対し、日本において国連犯罪防止刑事司法会議(コングレス)が開催される2020年までに死刑制度の廃止を目指すべきであることなどを求めてきた。当会においては、日本弁護士連合会主催の第63回人権擁護大会が予定されている中での執行であり、死刑存廃を含む刑罰制度についての社会的な議論が十分に尽くされる前に、重大な人権侵害の疑いが呈されている死刑執行が強行されたことに落胆を禁じ得ない。
死刑は、かけがえのない人命を奪う刑罰であるうえ、誤判・冤罪により死刑を執行した場合には取り返しがつかないこと、死刑の犯罪抑止力は実証されていないことなどの様々な問題を内包している。また、死刑に直面している者に対しては、死刑が執行されるまで、その全ての刑事手続の段階において極めて十分な弁護権、防御権が保障されるべきであるにも拘わらず、我が国の刑事裁判においては、死刑求刑案件について、いわゆるスーパー・デュープロセスは保障されておらず、とくに今回も再審請求中の死刑確定者に対する死刑の執行であって、この観点からも重大な疑問がある。
内閣府が2014年11月に実施した世論調査で、「死刑もやむを得ない」とした80.3%の回答者への追加質問では、そのうち40.5%が「状況が変われば将来的には死刑を廃止してもよい」と回答している。また、死刑制度の存廃について終身刑が導入された場合は、「死刑を廃止する方がよい」という回答も全回答者の37.7%に上っている。死刑についての情報が十分に与えられ、死刑の代替刑の先行導入等が実現すれば、世論に死刑存置の根拠を求めていた状況が変わる可能性がある。
また、国際社会は、確実に死刑廃止に動いている。2018年12月17日、国連総会本会議において、史上最多の支持(121ヵ国)を得て死刑廃止を視野に入れた死刑執行の停止を求める決議案が可決された。死刑制度を残し、現実的に死刑を執行している国は、2018年は20ヵ国と今や圧倒的に少数になっている。国連の自由権規約委員会、拷問禁止委員会及び人権理事会は、死刑の執行を繰り返している日本に対し、死刑執行を停止し、死刑廃止を前向きに検討するべきであるとの勧告を出し続けている。
日本政府は、国際社会からの死刑廃止を求めるメッセージに対し、死刑制度の廃止をもって応えるべきである。そうすることにより、日本に対する国際社会の評価も高まり、2020年のコングレス及びオリンピック・パラリンピックの開催にふさわしい環境が整えられたと評価されるに違いない。
当会は、本件の死刑執行に対し強く抗議するとともに、死刑執行を直ちに停止し,2020年までに死刑制度の廃止を目指すことを求める。

                         2019(令和元)年8月27日
鹿児島県弁護士会
会長 笹 川 理 子

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