決議・声明

鹿児島市議会代表質疑中のLGBTに対する不適切発言に抗議する会長声明

2019.09.26

令和1年(2019年)9月11日、鹿児島市議会第3回定例会において、自民みらい会派は、LGBT施策の導入について慎重な姿勢を市に求める内容の代表質疑(以下「本質疑」という。)を行った。

本質疑において、「(子どもは)自然な男女の親によって育てられることが基本」、「神の与えたもうた自然の摂理に合った男女の性の考えを強調するなど、市民が納得するバランスのとれた性教育を行うべき」、「パートナーシップ制度の利用数は、男女の婚姻に比べて極めて低く、ニーズがほとんどない」などの発言がなされた。

本発言は、LGBT(以下、性的マイノリティを総称する用語として、「LGBT」を用いる。)の尊厳を傷つけ、また性自認・性的指向に基づく偏見を助長するものであり、当会は、これらの発言に強く抗議する。

すべての国民は、性別、性自認及び性的指向の如何にかかわらず、一人ひとりが個人として、自分らしく生きることの権利を最大限に尊重されなければならない。それぞれの性のあり方が尊重され、自身の性に関する事柄を決定し、それについて差別や干渉されない権利は、自己決定権として憲法第13条で保障される人権である。

性のあり方は多様である。身体の性と性自認との間に違和感のない男女による結びつきのみを「自然の摂理に合った」ものととらえ、子どもは男女の親によって育てられるべき、またそのように教育すべきという本発言は、性の多様性を否定するものであり、到底容認できない。

日本では、性や婚姻に関するほとんどの法制度が、異性愛者であり、かつ性別違和のない者を前提として構築されてきた。LGBTは、これらの者に比べ、法律上の不利益だけでなく、偏見、無理解や無知から生じる苦痛を社会生活の中で強いられている。種々のLGBT施策(性自認・性的指向に基づく差別の禁止、パートナーシップ制度、同性婚等)は、これらの不自由や不利益を解消し、LGBTを、そうではない者と平等に取り扱うことを求めるものである。LGBT施策を導入することにより、LGBTではない者に不利益を与えたり、不自由を課したりするものではなく、「逆差別」にはあたらない。

また、種々のLGBT施策は、LGBTではない者に対し、「LGBTに対し理解と共感を持つこと」など特定の思想や信条を強制するものではない。また、LGBT施策について「疑義を覚える」という内面における考えや思想までも禁止するものではない。

 

今日、日本では、地方自治体レベルで、LGBTについての施策(パートナーシップ制度(東京都渋谷区、東京都世田谷区等のほか、九州・沖縄では福岡市、熊本市、宮崎市、北九州市、長崎市及び那覇市)、性的指向・性自認に基づく差別を禁止する条例の制定(東京都、茨城県等)、指針の制定など)が次々に導入・施行されている。また、民間企業においても、慶弔休暇や結婚祝い金の支給を法律婚の夫婦や男女の事実婚カップルと同様に同性カップルにも適用したり、職場における性的指向・性自認に基づく差別を明示的に禁止したりするなど、主体的な取り組みが増加している。国レベルでは、「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」の制定、いわゆるパワハラ関連法に基づくパワハラ防止対策指針において、性的指向・性自認に関するハラスメント及び、性的指向・性自認の望まぬ暴露であるいわゆるアウティングも対象になり得ることの明記が求められるなど、LGBT施策が少しずつではあるが進められている。このように、現在の日本では、LGBTが直面する問題をめぐり、国・自治体・民間の各レベルにおいて、取組みが行われている。

他方で、国際社会に目を向けると、LGBTの人権保障のための動きが我が国に比べ格段に活発である。2015年6月26日には、アメリカ合衆国連邦最高裁判所が、同性婚を禁止又は認めない州法は、合衆国憲法に違反するとの判決を下し、これにより全州において同性婚が認められるに至った。アメリカ以外の諸外国においても、同性婚の法制化が相次ぎ、現在では、台湾など30近くの国・地域において同性婚が法制化されている。一方、日本では、同性婚が法制化されていないのみならず、同性カップルについて、何らの法的な保障も認められていない。日本は、国連の国連人権理事会より、性的指向・性自認による差別を禁止する法律を制定すること、要件が厳格すぎると批判される性同一性障害者特例法の改正など、LGBTや性的指向・性自認に関する人権施策状況に関し、複数回の改善勧告を受けている。その他の委員会(自由権規約委員会、社会権規約委員会及び女性差別撤廃委員会)からも、性的指向・性自認による差別に関連する法整備の実現の対応、LGBTに関する啓発活動への尽力等(自由権規約委員会)同性カップルに対する社会権の保障(社会権規約委員会)、LBT女性に対する健康・教育・労働の場面における差別的状況の改善(女性差別撤廃委員会)を複数回にわたり求められている。我が国においては、LGBTに対する偏見・無理解がいまだ根強く、国際社会から遅れをとっているのが現状であると言わざるを得ない。

このような日本の現状における本発言は、LGBTに対する偏見や無理解を後押しし、LGBTの人権を否定するものであり、きわめて不適切である。また、本発言は、LGBTがマイノリティであり、性別違和のない異性愛者に比し数が少ないという前提や、差別や偏見にさらされることの多いLGBTの置かれた状況を度外視し、同性パートナーシップ制度のニーズがほとんどないと断じるなど、LGBTの存在やその人権を軽んじるものである。

当会は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するため、本質疑におけるLGBTに対する不適切な発言について強く抗議すると共に、鹿児島市議会に対し、性別、性自認及び性的指向の如何にかかわらず、誰もが自分らしく生きることができる社会の実現に向けた協力を求めるものである。

以上

 

2019年(令和1年)年9月25日

鹿児島県弁護士会

会長 笹川 理子

 

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