決議・声明

新型コロナウイルス感染症に伴う人権侵害行為に対する会長声明

2020.06.19

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、誤解や偏見に満ちた誹謗中傷や差別が行われているとの報道が散見されます。また、その誹謗中傷や差別を煽るような報道も見受けられます。そして、その誹謗中傷や差別は、感染者、濃厚接触者、医療従事者、宅配業者やそれぞれの家族など、様々な方々に向けられています。

このような誹謗中傷や差別は、憲法13条後段の幸福追求権から導かれる人格権を侵害する、重大な人権侵害行為です。医療機関や通勤等で不可抗力的に感染した方や濃厚接触者、感染症の治療にあたる医療従事者、外出自粛が続く中人々に荷物を運ぶ宅配業者等に対して行われることが許されないのは言うまでもありません。また、たとえ不要不急の娯楽等、行政の要請に反する状況で感染したとされる方、あるいは感染を広げたおそれのある方に対してであっても、決して許されない行為です。

誹謗中傷や差別はれっきとした違法行為ですし、それが、たとえ正義感に基づくものであったとしても、その内容や程度によっては、名誉毀損罪(刑法230条1項)、侮辱罪(同231条)等で刑罰を科されることがあります。また、不法行為(民法709条)として損害賠償義務を負うこともあります。

新型コロナウイルス感染症に関する誹謗中傷や差別がまかり通ると、感染者や濃厚接触者が誹謗中傷や差別を恐れて、感染した事実を正直に話すことができず、あるいは、行動歴等の情報提供をためらい、その結果、正しい情報を得られずにかえって感染拡大を招くかもしれません。また、医療従事者や宅配業者の業務に支障を来たせば、医療崩壊や物流の滞留が生じるなど、ひいては、私たちの日常生活に重大な影響を及ぼすかもしれません。

言葉や文字は、時に人を傷つけ、死に追いやる凶器となります。新型コロナウイルス感染症が落ち着きつつある今こそ皆で立ち止まって、そのことを一緒に考えていきませんか。

感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律(感染症法)前文においても謳われているように、我が国では、過去にも、ハンセン病や後天的免疫不全症候群(AIDS)等感染症の患者に対して誹謗中傷や差別を行うという過ちが犯されてきました。このような過去の過ちを教訓としなければなりません。

また、感染症法第4条においても、「国民は、感染症に関する正しい知識を持ち、その予防に必要な注意を払うよう努めるとともに、感染症の患者等の人権が損なわれることがないようにしなければならない。」と定められています。すなわち、私たちが相手とすべきは、感染者、濃厚接触者、医療従事者、宅配業者やそれぞれの家族等ではなく、新型コロナウイルス感染症そのものです。新型コロナウイルス感染症に対処し、乗り切っていくには、正しい知識を持ち、思いやりの心を持って冷静に行動することが大切です。それは、我々弁護士、報道機関、そして市民の皆様においても何ら変わるものではありません。

鹿児島県弁護士会は、日本弁護士連合会や鹿児島県をはじめとする行政等と連携しながら、新型コロナウイルス感染症に負けないよう市民の皆様への法律的支援を進めていくとともに、新型コロナウイルス感染症に関連する誹謗中傷や差別を防止し、人権を守るべく、引き続き全力を尽くす所存です。

以上

2020(令和2)年6月19日

鹿児島県弁護士会

会長 新 倉 哲 朗

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