決議・声明

札幌地裁違憲判決(「結婚の自由をすべての人に」事件)を受け、すべての人にとっての婚姻の平等を実現するための法整備を求める会長声明

2021.06.02

札幌地裁違憲判決(「結婚の自由をすべての人に」事件)を受け、すべての人にとっての婚姻の平等を実現するための法整備を求める会長声明

 

令和3(2021)年3月17日、札幌地方裁判所(民事第2部、武部知子裁判長)は、同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定(以下「本件規定」という。)は、「異性愛者に対しては婚姻という制度を利用する機会を提供しているにもかかわらず、同性愛者に対しては、婚姻によって生じる法的効果の一部ですらもこれを享受する法的手段を提供しないとしていることは、立法府が広範な立法裁量を有することを前提としても、その裁量権の範囲を超えたものであるといわざるを得ず」、同性カップルは異性カップルのように婚姻によって生じる法的効果を享受することができないという区別取扱いは、「その限度で合理的根拠を欠く差別取扱いに当たると解さざるを得」ず、本件規定は、「上記の限度で憲法14条1項に違反すると認めるのが相当である」という判決(以下「札幌地裁違憲判決」という。)を言い渡した。

憲法24条、13条違反に関する原告らの主張は斥けられ、また損害賠償の請求は棄却されたものの、同性間の婚姻を認めない民法及び戸籍法の規定が違憲であると判示したはじめての判決であり、当会は、これを高く評価する。

 

日本では、同性パートナーシップ制度を実施する自治体が105あり(本年5月1日時点)、実施自治体人口は、日本の総人口の37.4%をカバーするほどの広がりを見せており(同性パートナーシップネット https://samesexpartnership.wixsite.com/mysite-1/blank-8)、鹿児島県でも、指宿市が本年4月に導入し、鹿児島市も本年度中の導入を目指している。

この点パートナーシップ制度は、これまで存在しないことにされてきた同性カップルの存在を自治体が正面から認めるものである。

しかし、パートナーシップ制度には、法律婚と同様の法的効力はなく、この制度のみでは同性カップルは婚姻によって生じる種々の法律上や財産上の利益を享受することはできない。パートナーシップ制度は、婚姻には代えられないのである。

同性愛は、精神疾患と考えられていた時代が長く、現在ではその医学的知見は誤りであるとして否定されているものの、同性愛者を含む性的マイノリティに対しては、いまだに無知や無理解に基づく差別・偏見が残る。同性カップルが婚姻できる法整備がされない以上、「同性カップルは異性カップルと同等の保護に値しない異質な存在である」というメッセージを国が国民に対して送っているも同然であり、同性カップルに対する差別に他ならない。

婚姻するかどうか、婚姻する場合には配偶者として誰を選択するかは、人生において重大な選択のひとつであり、婚姻の自由として憲法13条によって保障される。憲法24条は、婚姻に戸主の承認を必要とし、「家」に縛られていたそれまでの婚姻から人々を解き放ち、人生の重大な選択を当事者の自由な意思で決められるようにしたことに意味があった。婚姻を希望する相手が異性でも同性でもその趣旨は妥当するのであり、婚姻という選択肢を取り得るかどうかについて、異性カップルとの間の差異はあってはならないことである。

 

同性間の婚姻が可能となる国を目指して、全国で行われている裁判はまだ続く。司法に対しては、札幌地裁違憲判決のように、人権の最後の砦としての役割を十分に果たすことを期待する。

しかし、その間にも、法整備がされない限り、全国にいる婚姻を求める同性カップルに対する差別は続く。

したがって、当会は、国会及び政府に対し、札幌地裁違憲判決を真摯に受け止め、すべての人が平等に婚姻できるような法整備等を速やかに行うことを強く求める。

令和3(2021)年5月31日

鹿児島県弁護士会

会長 保澤 享平

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