決議・声明

選択的夫婦別姓制度の実現を求める会長声明

2021.09.06

選択的夫婦別姓制度の実現を求める会長声明

 

2021年6月23日、最高裁判所大法廷は、夫婦同姓を強制する民法750条及び戸籍法74条1号について、憲法24条に違反するものではないと判示しました。

 

民法750条は婚姻に際し夫婦が同姓となることを規定し、それを受けて戸籍法74条1号は婚姻届にその夫婦の姓を届け出ることを規定しているため、両規定の結果、夫婦同姓を受け入れない限り、法的な婚姻ができないという意味において夫婦同姓が強制されています。本件は夫婦別姓のままでの婚姻届の受理を命ずることを申し立てた家庭裁判所への不服申し立ての特別抗告事件です。

 

夫婦同姓を定めた民法規定については、2015年12月16日に「合憲」とする最高裁判決が存在します。今回の大法廷決定は、2015年の判決以降の社会や国民の意識の変化等を認めながらも、同判決を引用したのみで実質的な検討は行わず、夫婦同姓を強制し別姓夫婦に法律婚の効果を認めないことがなぜ許されるかという本質的な問いには答えませんでした。

多数決原理で是正されにくい少数者の権利侵害状況を救済するのがまさに司法の役割であり、最高裁判所がその任務を果たさなかったことは、極めて不当です。

 

しかしながら、2015年の最高裁判決では、5人の裁判官が、夫婦同姓の強制は憲法24条違反であるとの意見を述べています。

今回の大法廷決定でも、4人の裁判官が網羅的な検討を行い、夫婦同姓の強制は憲法24条違反であると述べ、国会が長期的に亘りこの問題を放置してきたことを厳しく批判しています。さらに、いずれの多数意見も、制度の在り方は国会で論ぜられ判断されるべきと、立法的取り組みを促しています。

 

もとより氏名は重要な人格権であり(1988年2月16日・最高裁判決参照)、改姓は、望んで行う場合は別として、アイデンティティの喪失に加え、個人の識別を阻害し、効果として、変更前の氏名に紐付けられていた当該個人に対する信用や評価が損なわれる等の重大な不利益をもたらします。

現行法下では、婚姻によって当事者の一方がこの不利益を被り不平等な状況が生じさせられます。現時点でも婚姻時に改姓する大多数は女性であるという実情は変わらず、性別による不平等が存在しています。

 

法務大臣の諮問機関である法制審議会が、1996年に選択的夫婦別姓制度を導入する民法改正要綱試案を答申してから四半世紀を経ても未だ成立していません。

 

国際的に見ても、民法制定当時(1947年)と異なり、2015年の内閣総理大臣の答弁及び2020年の法務大臣の答弁によれば、夫婦同姓を強制する法制度を残す国は日本の他にありません。日本は1985年に女性差別撤廃条約を批准していますが、同条約に基づく女性差別撤廃委員会からは、夫婦別姓を認めない民法の規定は、女性に対する差別を助長する制度として、2003年から2016年までに3回に亘り是正勧告がなされました。

これに対し、平成8年2月に法制審議会が「民法の一部を改正する法律案要綱」を答申し、同要綱において選択的夫婦別姓制度の導入を提言、これを受けて法務省が平成8年及び平成22年にそれぞれ改正法案を準備したものの、現在までの間、国会に改正法案を提出するに至っていません。

 

当会はあらゆる形態の家族が尊重され、性別による不平等が解消されることを目指して、民法750条を改正し、望む人だけが改姓し、望まない改姓が強制されない選択的夫婦別姓制を導入する立法を速やかに行うよう、強く求めます。

 

以上

 

 2021年(令和3年)年8月24日

鹿児島県弁護士会

会長 保 澤 享 平

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