決議・声明

最低賃金額の引上げ等を求める会長声明

2022.06.28

例年、厚生労働大臣は、6月頃に中央最低賃金審議会に対してその年度の地域別最低賃金額改定の目安についての諮問を行い、同審議会は7月頃に答申をしている。

昨年、同審議会は、全ての都道府県について28円の引上げを答申し、これに基づき各地の地域別最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定され、鹿児島の場合には時給の最低額821円と改められた(令和2年度の793円から28円増)。

時給821円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても月収約13万7500円、年収約165万円にしかならない。労働者の健康で文化的な最低限度の生活を実現するという観点から見た場合、この賃金水準では依然として不十分であるといわざるを得ない。そのため、最低賃金額の引上げの動きを後退させてはならない。

また、長期にわたるコロナ禍により中小企業の経営環境が厳しさを増していることにも配慮が必要である。国は、最低賃金引上げに伴う中小企業への支援策について、「業務改善助成金」制度により、影響を受ける中小企業に対する支援を実施している。しかし、中小企業にとって必ずしも使い勝手の良いものとはなっていない。我が国の経済を支えている中小企業が、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるように十分な支援策を講じることが必要である。上記制度では不十分であることから、各種税負担や社会保険料の事業主負担部分を軽減するなどの具体的措置が必要である。

さらに、最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも見過ごすことのできない重大な問題である。令和3年度の最低賃金は、最も高い東京都で時給1041円であるのに対し、鹿児島の821円との間で実に220円もの開きがある。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、最低賃金の低い地方の経済が停滞し、地域間の格差が縮まるどころか、むしろ拡大している。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも極めて効果がある。

地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方との間で、ほとんど差がないことが明らかになってきている。鹿児島県のような地方においては、公共交通機関の利用が制限されるため、通勤その他の社会生活を営むために自家用車の保有を余儀なくされることが背景にある。労働者の生計費に地域間格差がほとんど存在しない以上、最低賃金の地域間格差をなくすため全国一律最低賃金制度を実現すべきである。

以上の次第で、最低賃金の引上げによって労働者の生活の安全を確保し、同時に地域経済を活性化させるため、当会は、各地の地方最低賃金審議会において最低賃金額の引上げを図る前提として、本年度の中央最低賃金審議会が、まずは地域間格差を縮小しながら全国全ての地域において最低賃金の引上げを答申すべきことを求めるものである。

 

2022年(令和4年)6月27日

鹿 児 島 県 弁 護 士 会

会 長  神 川 洋 一

 

 

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