決議・声明

今、改めて、すべての人にとっての婚姻の平等を実現するための法整備を求める会長声明

2023.06.21

今、改めて、すべての人にとっての婚姻の平等を実現するための法整備を求める会長声明

 

現在、全国5地域の裁判所(札幌高裁、東京高裁(東京第一次訴訟)、東京地裁(東京第二次訴訟)、大阪高裁、名古屋地裁、福岡地裁)で係属している訴訟(「結婚の自由をすべての人に」訴訟)では、法律上の性別が同性である相手との婚姻を望む原告らが、婚姻を異性間の者に限り同性間の婚姻を認めていない民法及び戸籍法の規定(以下「本件諸規定」という。)の違憲性を争っているところ、令和5(2023)年5月30日に名古屋地裁、及び同年6月8日に福岡地裁で、それぞれ違憲判断が言い渡された。

名古屋地裁(民事第8部、西村修裁判長)は、婚姻制度が、両当事者の関係性を保護するための法律上の効果を付与するものであることに加え、何よりも、婚姻は、二人の関係性を公証し、正当な関係として社会的承認を与えるための極めて有力な手段となっていることを指摘した。そして、当事者の関係が国の制度により公証され、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与されるための枠組みが与えられるということ自体が重要な人格的利益であると述べた。そして、このような重要な人格的利益を享受できないことにより同性カップルが被る不利益は重大であり、その規模も期間も相当なものであって、その影響は深刻と指摘した。その上で、同性カップルは、法律婚制度に付与されている重大な人格的利益を享受することから一切排除されているのに対し、その状態を正当化するだけの具体的な反対利益は十分に観念しがたく、現状を放置することについては、もはや個人の尊厳の要請に照らして合理性を欠くに至っており、国会の立法裁量の範囲を超えていると判断し、本件諸規定は、同性カップルに対して、その関係を国の制度によって公証し、その関係を保護するのにふさわしい効果を付与するための枠組みすら与えていないということから、憲法24条2項に違反すると結論付けた。さらに、本判決は、同性愛者にとって同性との婚姻が認められないということは婚姻が認められないのと同義であって、自ら選択する余地のない事柄である性的指向を理由とする別異取扱いであると指摘し、憲法24条2項に違反すると同時に憲法14条1項にも違反するとの判断を示した。

福岡地裁(第6民事部、上田洋幸裁判長)は、永続的な精神的及び肉体的結合の相手を選び、家族として公証する制度は、現行法上婚姻制度しか存在せず、婚姻により、公的にも、事実上も、種々の権利利益を享受することができることを指摘した上で、婚姻をするかしないか及び誰と婚姻して家族を形成するかを自己の意思で決定することは同性愛者にとっても尊重されるべき人格的利益であり、同性愛者において、これらの利益を受けるための婚姻ができないことは看過しがたい不利益であると認め、原告らはその人格的利益を侵害されていると認めた。その上で、婚姻制度の実態や婚姻制度に対する社会通念が変遷し、同性婚に対する国民の理解が相当程度浸透していることもふまえると、同性カップルが婚姻制度によって得られる利益を一切認めず、自分が選んだ相手と法的に家族になる手段を与えていない本件諸規定は、憲法24条2項に違反する状態であると判示した。さらに、本判決は、本件諸規定は国家賠償法上の違法とはいえないと結論づけたものの、立法者に対し、憲法24条2項に違反する状態を解消する措置に着手すべきと述べた。

 

「結婚の自由をすべての人に」訴訟については、現在までに5つの地裁において判決が言い渡されており、上記名古屋地裁判決及び福岡地裁判決は、本件諸規定を憲法14条1項違反とした令和3(2021)年3月17日の札幌地裁判決、同性愛者についてパートナーと家族になるための法制度が存在しないことについて憲法24条2項に違反する状態にあるとした令和4(2022)年11月30日の東京地裁判決に次ぐ、3件目及び4件目の違憲判断である。結論として合憲と判断した同年6月20日の大阪地裁判決も将来的に違憲となる可能性を指摘しており、同性カップルについて、異性カップルと同様、家族として法的に保護するための制度が必要であるとの司法判断の流れはもはや動かしがたいものとなったというべきである。

 

しかしながら、政府及び国会は、同性カップルによる婚姻を可能とするための法整備について、いまだ具体的な検討を開始すらしていない。本年2月には、岸田文雄内閣総理大臣が、同性同士の婚姻について「家族観や価値観、社会が変わってしまう課題だ」と国会において答弁し、総理大臣秘書官(当時)が「(同性婚導入に)反対している人は結構いる。」、「同性婚導入となると、社会のありようが変わってしまう」などと発言をしたと報道され、政府の極めて消極的な姿勢がこれまで以上に浮き彫りとなった。

 

同性との婚姻を望む当事者は、現状、婚姻したい相手と婚姻できないという重大な利益を日々侵害されている。また、同性カップルが婚姻できる法整備が進まない状況は、「同性カップルは異性カップルと同等の保護に値しない異質な存在である」というメッセージを国が国民に対して送っているも同然であり、同性カップルに対する差別に他ならない。

上記札幌地裁判決を受けた令和3(2021)年6月の当会会長声明において、当会は、婚姻するかどうか、婚姻する場合には配偶者として誰を選択するかは、人生において重大な選択のひとつであり、婚姻の自由として憲法13条、同24条によって保障され、婚姻という選択肢を取り得るかどうかについて、異性カップルとの間の差異はあってはならないことであると述べた。

今、改めて、当会は、国会及び政府に対し、上記一連の違憲判決が示す司法からの厳しいメッセージを真摯に受け止め、すべての人が平等に婚姻できるような法整備等を速やかに行うことを強く求める。

 

令和5(2023)年6月20日

鹿児島県弁護士会

会長 湯ノ口 穰

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