決議・声明

最低賃金額の引上げ等を求める会長声明

2023.06.27

例年、厚生労働大臣は、6月頃に中央最低賃金審議会に対し、その年度の地域別最低賃金額改定の目安についての諮問を行い、同審議会は7月頃に答申を行う。

昨年、同審議会は、全都道府県をABCDの4ランクに分けて、Aランク31円(6都府県)、Bランク31円(11府県)、Cランク30円(14道県)、Dランク30円(鹿児島県を含む16県)の引上げを答申し、これに基づき各地の地方最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定され、最終的に鹿児島県の時給は最低額853円(令和4年度の821円から32円増)と定められた。

しかし、時給853円という水準は、1日8時間、週40時間働いたとしても月収約14万7800円、年収約177万円にしかならない。今般、ロシアのウクライナ侵攻などの中で、世界的な資源価格の高騰が続き、国民においても食料品や光熱費など生活の基礎となる部分で、一連の価格高騰のあおりを受け、これまでにない家計の負担に苦しむ状況が続いている。ゆえに、労働者の健康で文化的な最低限度の生活を確保し、ひいてはその安定した生活を実現するという観点から見ても、この賃金水準では依然として不十分であるといわざるを得ない。そのため、最低賃金の引上げの動きを後退させてはならない。

また、長期に及ぶコロナ禍により中小企業の経営環境が引き続き厳しい状況にあることにも配慮が必要である。国は、最低賃金引上げに伴う中小企業への支援策について、「業務改善助成金」制度により、影響を受ける中小企業に対する支援を実施している。しかし、中小企業にとって必ずしも使い勝手の良いものとはなっていない。我が国の経済を支えている中小企業が、最低賃金を引き上げても円滑に企業運営を行えるように十分な支援策を講じることが必要である。上記制度では不十分であることから、各種税負担や社会保険料の事業主負担部分を軽減するなどの具体的措置が必要である。

さらに、最低賃金の地域間格差が依然として大きく、ますます拡大していること も見過ごすことのできない重大な問題である。令和4年度の最低賃金は、最も高い東京都で時給1072円であるのに対し、最も低い10県は時給853円と、実に219円もの開きがある。最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係があり、最低賃金の低い地方の経済が停滞し、地域間の格差が縮まるどころか、むしろ拡大している。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも極めて効果がある。

地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方との間で、ほとんど差がないことが明らかになってきている。そうである以上、最低賃金の地域間格差をなくすため全国一律最低賃金制度を実現すべきである。

以上の次第で、最低賃金の引上げによって労働者の生活の安全を確保し、同時に地域経済を活性化させるため、当会は、各地の地方最低賃金審議会において最低賃金額の引上げを図る前提として、本年度の中央最低賃金審議会が、まずは地域間格差を縮小しながら全国全ての地域において最低賃金の大幅な引上げを答申すべきことを求めるものである。

 

2023年(令和5年)6月26日

鹿 児 島 県 弁 護 士 会

会 長  湯 ノ 口 穰

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