決議・声明
最低賃金額の引上げ等を求める会長声明
例年、厚生労働大臣は、6月頃に中央最低賃金審議会に対してその年度の地域別最低賃金額改定の目安についての諮問を行い、同審議会は7月頃に答申をしている。
直近の令和6年度の改定において、同審議会は、全てのランクで一律50円の引上げを目安として答申し、これに基づき各地の地域別最低賃金審議会において地域別最低賃金額が決定され、全国加重平均額は過去最大の51円増となる1055円となった。鹿児島県の場合には時給の最低額953円と改められた(令和5年度の897円から56円増。)。
しかし、鹿児島県の時給953円という水準は、フルタイムで就労した場合でも年収に換算して約198万円に止まるものであり(1日8時間、週5日、年間52週間で計算。)、この賃金水準では、労働者が健康で文化的な最低限度の生活を実現することはできない。
現在、政府は「2030年代半ばまでに全国加重平均1500円」との目標を掲げているが、全ての都道府県が早期にこの目標を実現する必要がある。
さらに、最低賃金の地域間格差が依然として大きいことも見過ごすことのできない重大な問題である。令和6年度の最低賃金は、最も高い東京都で時給1163円であるのに対し、鹿児島県の953円との間では210円の開きがあるが、これは、年額に換算すると実に43万円以上にも上る大きな格差である。
最低賃金の高低と人口の転入出には強い相関関係がある。都市部への労働力の集中を緩和し、地域に労働力を確保することは、地域経済の活性化のみならず、都市部での一極集中から来る様々なリスクを分散する上でも効果がある。
しかも、地域別最低賃金を決定する際の考慮要素とされる労働者の生計費は、最近の調査によれば、都市部と地方との間でほとんど差がないことが明らかになってきている。鹿児島県のような地方においては、都市部と比較して住居費が低廉であるものの、公共交通機関の利用が制限されるため、通勤その他の社会生活を営むために自家用車の保有を余儀なくされることが背景にある。労働者の生計費に地域間格差がほとんど存在しない以上、最低賃金の地域間格差をなくすために、全国一律最低賃金制度を実現すべきであり、そのためにも、鹿児島県においては都市部を上回る水準で最低賃金を上げ続けていく必要がある。
よって、当会は、最低賃金の引上げによって労働者の生活の安定を確保し、同時に地域経済を活性化させるため、中央最低賃金審議会が厚生労働大臣に対し、地域間格差を縮小しながら、全国全ての地域において最低賃金を大幅に引き上げるよう答申すること及び全国一律最低賃金制度の実施に向けた提言をなすことを求める。
また、鹿児島地方最低賃金審議会が鹿児島労働局長に対し、鹿児島県の最低賃金額の大幅な引上げを答申することを強く求める。
2025年(令和7年)7月8日
鹿 児 島 県 弁 護 士 会
会 長 白 鳥 努