決議・声明
高金利の引き下げ等を求める会長声明
2003年7月に成立したいわゆるヤミ金融対策法(貸金業の規制等に関する法律(以下「貸金業規制法」という。)及び出資の受入れ、預り金及び金利等の取り締まりに関する法律(以下「出資法」という。)の一部を改正する法律)附則12条は、施行後3年すなわち2007年1月を目途に貸金業制度の在り方や出資法の上限金利の見直しを行うことを定めており、本年度中に法案が国会で上程される見通しである。
わが国の自然人の破産申立件数は2002年には21万件を超え、2003年には24万件とピークに達し、その後若干減少しているとはいえ依然として高水準にある。多重債務者は150万人~200万人に及ぶとされ、2004年の経済苦、生活苦による自殺者は約8000人に達している。路上生活者、離婚・児童虐待の背景にも多重債務問題があると指摘されている。このように、多重債務問題は経済的に困窮する市民の人権に関わる重大な社会問題であるが、その大きな要因のひとつが高金利による貸付である。
このような中、最高裁判所は、貸金業規制法43条1項のみなし弁済規定が利息制限法に対する例外規定であり、その適用要件については厳格に解釈すべきものであるとの判断を示し(平成16年2月20日判決)、更に本年1月には、みなし弁済規定について、利息制限法に定める制限利息を超過する利息を支払うことが事実上強制される場合は「任意に支払った」とは言えず、有効な利息の支払とみなすことができないとする画期的な判断を相次いで示した。最高裁判所の一連の判決は、社会の実態に照らし利息制限法違反の高金利は容認しないとする司法の立場を示したと言える。
ところが、上限金利の見直を契機に、貸金業界はみなし弁済規定(貸金業規制法43条)の要件の緩和と出資法の上限金利の引き上げを求め政界に対し強い働きかけを行っており、アメリカ政府も日本に対する年次改革要望書の中で金利を出資法の上限金利に一本化することを求めており、立法による金利の引き上げが行われかねない状況にある。
当会は、政府、国会に対して出資法の上限金利を少なくとも利息制限法の水準にまで引き下げ、みなし弁済規定を廃止し、日賦貸金業者、電話担保金融等に見られる出資法の特例措置の撤廃を強く求めるものである。
2006(平成18年)4月26日
鹿児島県弁護士会
会長:川村重春